パラスポーツ・パラアスリートの支え手の方々からのメッセージ ~アーチェリー~

 アーチェリークラシファイヤーをされている加藤真弓(かとうまゆみ)さん支え手としての役割、パラスポーツやパラアスリートの魅力などをお伺いしました。アーチェリーを支える方、競技、選手を知って、みんなで応援しましょう。


★アーチェリー
加藤真弓(かとうまゆみ)さん
(クラシファイヤー(障がいのクラス分け判定者))

(写真提供 加藤真弓さん/日本身体障害者アーチェリー連盟)
<プロフィール>
1972年生まれ。
1995年に理学療法士資格を取得。一般病院勤務を経て、現在は愛知県にある理学療法士・作業療法士養成校に勤務。勤務の傍ら休日に、約10年前から障がい者スポーツに関わり始める。
上級障がい者スポーツ指導員資格を取得し地元にて活動し、2016年から一般社団法人日本身体障害者アーチェリー連盟の国内クラス分け委員として活動

アーチェリーのクラシファイヤーに携わることになったきっかけを教えてください。

 元々私の上司がパラスポーツに関わっていたため、パラスポーツはある程度身近に感じていましたが、理学療法士という仕事柄、臨床現場にいて障がいを持った方と接する機会もあるので、臨床以外で自分に何かお手伝いができることはないかという思いを持っていました。
 それまでに、レクリエーション(レクスポーツ)に取り組んでいたこともあり、そこで知ったフライングディスク競技に関心を持ち、その後、色々な方からのアドバイスで、名古屋市の障がい者スポーツセンターに相談に伺ったのが、パラスポーツに本格的に関わるようになったきっかけです。
 パラアーチェリーとの出会いは、私が障がい者スポーツ指導員の資格をとって、競技の練習会や大会のお手伝いをさせていただいていたときに、日本身体障害者アーチェリー連盟の方にお声掛けいただいたのがきっかけです。それから、パラアーチェリーのクラシファイヤーを務めることになりました。
 クラシファイヤーとしての活動ですが、だいたい大会の前日にクラス分けが行われますが、大会が日曜日に開催されることが多いため、土曜日に実施することが多いです。今年度はこういう状況なので、なかなかそういう機会はありませんが、昨年度、一昨年度は、年4回クラス分けを行いました。
 国内の大会ですと、日本身体障害者アーチェリー連盟が主催又は後援している大会の前にクラス分けを実施しています。選手に対し問診をしたり、体を触ったりして、筋力や筋肉の硬さなどの身体機能の検査をします。その際、選手には最大限のところまで体を動かしてもらうようにしています。また、実際にアーチェリーの矢を放つ、シューティングの様子も観察し、用具の使用が適切になされているかも確認しています。
 アーチェリーのクラス分けとしては、W1とW2、ST、NEの4つがあります。W1が最も重度の障がいのある選手のクラスで、例えば、四肢麻痺、三肢麻痺、体幹・胴体部分で機能障がいがある方などがW1となります。W1の選手は、だいたい車いすを使用しています。W2は、両下肢に障がいがあり車いすを使用している選手のクラス、STは、立って矢を放つ、又は体のバランスが悪いためスツールと言われる背もたれのない椅子を使うクラスです。NEは、障がいが無いわけではないのですがパラアーチェリーの対象とはならないクラスで、大会にパラアーチャーとして出場する選手はW1、W2、STの3クラスとなります。

(写真提供 日本身体障害者アーチェリー連盟 ※大会中にクラシファイアーは選手の用具等をチェックします。)

アーチェリーの魅力を教えてください。

 ルールはオリンピックのアーチェリーとほぼ同じです。ただ、障がいの種類や程度に応じて、用具や装置、弓を射る方法など、選手一人ひとりの能力が最大限に生かされる工夫がなされています。例えば、弦をうまく引くことが難しい選手は、手を使うことなく競技ができるように発射装置のリリーサーというものを腕や肩に装着したり、口で弦を引けるように工夫したりします。海外では、弓を足で持ってプレーする選手もいます。選手一人ひとりの個性、魅力を見ることができるので、ぜひ注目してもらいたいです。
 また、パラアーチェリーは、「動」か「静」かで言うと、「静」のスポーツです。50m又は70m先の的を狙い、集中力を極限まで高めて競技をします。競技の際は、いつも同じ姿勢、同じフォームでいることが求められますが、重心というのはどうしても揺れてしまいます。それを常に制御しながら繰り返し矢を放つというのは、ものすごい精神力と身体的な能力が必要で、本当に凄いことだと思います。
 競技は、室内ではなく屋外で実施する場合もあり、その場合、自然との対話ではないですが、環境や自然の状況の変化にいかに柔軟に対応していくかというところも見どころの一つです。
 また、パラアーチェリーは健常者と同じルールで戦えるというのも大きな魅力で、今年行われた健常の大会にパラアーチャーが出場しましたが、そういった健常と障がいの垣根を感じさせないことが非常に驚きであり、パラアーチャーが持つ力の凄さを感じた瞬間です。

(写真提供 日本身体障害者アーチェリー連盟 ※予選ラウンドの様子)

(写真提供 日本身体障害者アーチェリー連盟 ※決勝ラウンドの様子)

選手との思い出のエピソードをお聞かせください。

 私の役割は、クラシファイヤーとしてのクラス分けのみになるので、クラス分けを実施するとき以外は、なかなか選手と触れ合う機会はありません。
 クラシファイヤーとしてではないのですが、初めてパラアーチェリーのトップ選手を間近で見た時に一番印象に残ったことは、集中力のオンとオフの切り替えがはっきりとしていて、ガラッと変えられるところです。試合前は他の選手と談笑していても、ブザーがひとたび鳴るとすぐに気持ちを切り替えて、それまでと全然違う雰囲気で集中して試合に臨んでいる姿は本当に凄いと感じます。
 クラス分けを受ける方は、長年アーチェリーを行っているベテランの選手もいれば、新人の選手もいらっしゃいますが、試合では誰もが一番になってほしい、そんな気持ちでいつも応援しています。

(写真提供 日本身体障害者アーチェリー連盟 ※ボランティアの方から選手が矢を受け取る様子)

パラリンピック・パラスポーツへの思いをお聞かせください。

 東京でパラリンピックが開催されるということで、パラスポーツが今までよりも注目されるようになったことはとても嬉しいです。スポーツはリハビリテーションの手段としても定着してきていますが、人と人とをつなげる力、人と社会をつなげる力など、色々な力があると思います。身体も動かしますが、心も動かされます。選手も見ている人も。障がいがある人もない人も、多くの方にパラリンピックの種目のみならず、色々な障がい者スポーツを知ってもらって、一人でも多くの方の心と身体が動き出すきっかけになってほしい、そして、障がいへの理解が今よりも、もっともっと高まると良いと思っています。
 スポーツを始めることは、ご高齢の方ですと競技というところまではなかなか難しい状況もあるかと思いますが、私の関わる職場でも、まずはレクリエーションや、ゆるスポーツのようなものから始めて、体を動かしていただいています。若い方ですと、競技性の高いものにすごく魅力を感じると思います。年代にも合わせながら、障がい者スポーツが広がっていってほしいと思います。

(写真提供 日本身体障害者アーチェリー連盟 ※矢取りの様子。多くの方の協力があって大会を開催することができます。)


(令和2年12月 東京都オリンピック・パラリンピック準備局パラリンピック部調整課インタビュー)