パラスポーツ・パラアスリートの支え手の方々からのメッセージ ~ボート(パラローイング)~

 ボート(パラローイング)日本ボート協会パラローイング委員長(日本代表コーチ(2007年~2010年)をされている高浜一朗(たかはまいちろう)さんに支え手としての役割、パラスポーツやパラアスリートの魅力などをお伺いしました。ボート(パラローイング)を支える方、競技、選手を知って、みんなで応援しましょう。


★ボート(パラローイング)
高浜一朗(たかはまいちろう)さん
日本ボート協会パラローイング委員長
(日本代表コーチ(2007年~2010年))

(写真提供 公益社団法人日本ボート協会)

<プロフィール>
1980年 一橋大学端艇部入部
1986年 同 学校対校クルーコーチ
2006年 日本アダプティブローイング協会(後の日本パラローイング協会)設立に参画
2007年から2010年までパラローイング日本代表コーチを務める。
2020年7月から日本ボート協会パラローイング委員長に就任

ボート(パラローイング)に携わることになったきっかけを教えてください。

 大学よりボート競技を始め、大学時代の4年間は勉学もせず、ほぼボート漬けの生活を送りました。卒業後しばらくコーチを務めた後は、ボート競技から離れていましたが、2006年に母校ボート部の先輩の勧誘で、障がい者ボート(パラローイング)の指導に携わるようになりました。その後、2007年から2010年まで日本代表コーチを務め、2007年の世界選手権、2008年北京パラリンピックの世界最終予選、2010年のアジアパラ競技大会に帯同しました。

 2018年7月に、特定非営利活動法人日本パラローイング協会が公益社団法人日本ボート協会に統合した後、日本ボート協会パラローイング委員会委員、オフィサーを歴任し、2020年の7月にパラローイング委員長に就任しました。


(写真提供 公益社団法人日本ボート協会)

ボート(パラローイング)の魅力を教えてください。

 ボート競技は直線2000mの距離で速さを競います。水上を浮き(ブイ)で仕切ったコースで行われ、スタートの合図で同時に漕ぎ始め、艇の先端がゴールを通過した順に順位がつけられます。シンプルな反面、奥が深いのもこの競技の魅力です。
 競技の際は、選手個々の障がいを用艇・用具などで補います。例えば、左半身・右半身に障がいのある選手を組み合わせて左右のバランスを取ったり、上肢に障がいのある選手には、オールハンドルを持ちやすく加工します。また、2名以上のチームボートは男女混合で、性別を超えてボートの速さを追求します。身長差や筋力の差があり、通常では動作が合わないはずのオール捌きですが、オールに最大の力をかけるポイントで合わせ、ひと漕ぎひと漕ぎのスピードを確保します。
 レースでは同じ動作を300回から400回繰り返しますが、2000mの長丁場であり、風や波の影響もあるため、強度を保ちつつバランスを確保して、ロスない理想の漕ぎを続けることは至難の業です。さらに、チームボ―トでは互いを信じ、全員で漕ぎを合わせなければなりません。
 しかし、ボートコースを颯爽と漕ぎだし、水上を滑るようにボートを進める快感は何物にも代え難い競技の魅力です。絶妙の艇のバランス、チームボートの統一感をぜひ体感してみてください。

(写真提供 公益社団法人日本ボート協会)

選手との思い出のエピソードをお聞かせください。

 2008年の北京パラリンピックを目指すPR3クラス混合舵手つきフォア(男女2人ずつ+舵手1人)のコーチをしているときのことですが、世界最終予選の渡航前夜、クルー全員で夕食会を開きました。当時珍しかった70インチの大画面でクルーの漕ぎをチェックしたのですが、視覚障がいの選手が、「私はこんなふうに漕いでいたんですね」と何気なくつぶやき、はっとさせられました。
 それまで何度も全員での動画チェックは行っており、てっきり全員が自分たちの漕ぎを分かっているものと思っていました。大変仲の良いクルーで、コミュニケーションに不足はなかったはずなのですが、「見えている状態」の前提条件が異なっていたのだと自らの不明を恥じました。その後は、より一層選手の障がいに合わせた指導に努めています。特に視覚障がいのある選手には、言葉でお伝えするだけでなく、現物・実際の動作を触わって確認してもらうようにしています。

(写真提供 公益社団法人日本ボート協会)

パラリンピック・パラスポーツへの思いをお聞かせください。

  障がい者スポーツ団体には、一つ目にパラアスリートの挑戦の場を提供、二つ目に国際競技力の強化、三つ目にパラスポーツの素晴らしさを伝える役割があると思いますが、なかでも、パラアスリートへの挑戦の場の提供が最重要の使命だと考えています。パラアスリートにとって、日の丸を背負って世界と戦うことは大変意義あることであり、大きな名誉です。財政的には厳しいことなのですが、これら貴重な経験を得られる機会であるパラリンピックや世界選手権等への出場を継続していけるよう尽力していきたいと思います。
 ボート競技はまだまだマイナースポーツですが、東京2020大会を契機に、一層の競技人口拡大、国際競技力強化に取り組みたいと思います。

(令和2年11月 東京都オリンピック・パラリンピック準備局パラリンピック部調整課インタビュー)