パラスポーツ・パラアスリートの支え手の方々からのメッセージ ~パラテコンドー~
パラテコンドーのトレーナーをされている長神征一郎さんに支え手としての役割、パラスポーツやパラアスリートの魅力などをお伺いしました。パラテコンドーを支える方、競技、選手を知って、みんなで応援しましょう。
★パラテコンドー
長神征一郎(ながみせいいちろう)さん
(写真提供 全日本テコンドー協会)
(トレーナー) <プロフィール>
1982年生まれ。
株式会社 高尾屋 AOCはりセンター整骨院グループ所属。
現在まで延べ10万人以上の治療実績と複数のスポーツ競技団体(野球、サッカー等)のトレーナーを経て、 現在、全日本パラテコンドー日本代表トレーナーとして活動
トレーナーに携わることになったきっかけ、ご活動内容を教えてください。
十数年前から(健常者の)テコンドーのトレーナーをやっていましたが、1、2年前にパラテコンドーが本格的に活動するようになってきた頃に、別のトレーナーの方のバックアップ要員として登録したのが最初です。その後、急遽、メイン担当の代わりにアメリカ遠征に帯同したのをきっかけに専属となりました。現在勤めている整骨院グループの上司に、リオオリンピックにトレーナーとして帯同した方がいたことも、パラ選手と関わる後押しとなりました。パラテコンドーの大会なども前から見ていたので、特段のハードルは無かったです。トレーナーになろうとしたきっかけですが、小中高と野球をやっていて、高校生のときに今の私の知識で言えば「肉離れ」を起こしました。治療院に行きましたが(今の私であれば絶対違う治療をしたと思いますが)、全然良くならず、本番で思いどおりにプレイできなかった悔しい思いがありました。そこで、ケガをした方たちが、それでも活躍し結果を残せるようにサポートしたい、そんな思いからトレーナーを目指しました。
活動内容としては、全日本パラテコンドーチームの合宿や海外遠征などに帯同し、ケア、テーピング、ケガへの対応等を行っています。

パラテコンドーの魅力を教えてください。
パラテコンドーは、障がい者スポーツの中で唯一と言っていい打撃系の格闘技です。上肢障がいの選手たちによる競技で、足で打撃をする、蹴り合うというのが特徴です。障がい者スポーツの中ではトップクラスと言っていいほどの激しいスポーツだと思います。おそらく障がいのある方は、これだけ激しいスポーツをやろうとは思わないのではないでしょうか。一方で、障がいのある方もこれだけ戦えるというのを見せることができるのが、このパラテコンドーだと思います。健常者のテコンドーは、頭部と胴部への攻撃が認められていますが、パラテコンドーの場合、頭部への攻撃は反則で、胴部への攻撃(足技)のみが認められています。攻撃もさることながら、防御・ガードの仕方も見どころです。健常者であれば攻撃を腕でガードできます。一方、パラテコンドーは上肢障がいの方による競技なので、ガードしようにも簡単にはできません。ガードが難しい分、パラテコンドーの方が点は入りやすいのですが、それをどう防ぐのか、体のひねり方や距離の取り方などを工夫して行う、健常者のテコンドーとは違う防御の仕方に注目してみてください。
パラテコンドーの得点は、特有のルールがあって、普通に蹴ったら2点ですが、180度回転してから蹴ると3点、3

(写真提供 全日本テコンドー協会)
選手との思い出のエピソードをお聞かせください。
パラテコンドー自体の歴史が浅いこともあり、選手たちも経験の浅い人が多いです。また、健常者のテコンドーだと子供の時からやっている人が多いですが、パラテコンドーの場合、ある程度大人になってから始めた人が多いです。色々な競技を見ていると、大会の直前は普通、選手はかなり緊張するんですが、パラテコンドーの選手は、20代後半から30代の方が多く、社会経験を積んできているせいか、しっかりしているというか、精神的に安定しています。気持ちの切り替え、スイッチのオンオフが非常に上手です。また、パラテコンドーは、年齢の高い選手もいるので、大会でも「今回で決めるぞ」という覚悟が伝わってきて、精神面の強さというのを感じます。
私は、トレーナーというのは、選手の身体を治すためというより選手を勝たせるためにあると思っています。選手はメダルを取るために人生をかけているのでその手助けを1%でもできればと思っています。
(写真提供 全日本テコンドー協会)
パラリンピック・パラスポーツへの思いをお聞かせください。
一般には、パラリンピックよりオリンピックの方がクローズアップされることが多いですが、パラアスリートには度肝を抜くようなパフォーマンスを見せてほしいと思っています。パラリンピックは、障がいのある方もこれだけできるんだということを見せられる大会です。健常者と同じように戦えるんだというのを見て、障がいのある方に自分もできるんだと勇気を持ってもらえたらと思います。そして、パラスポーツをやってみよう、パラテコンドーをやってみようという思いを少しでも持ってくれたら。障がいのある方が前向きに生きていくための一つに、パラスポーツ、パラテコンドーがあってくれるとすごくいいなと思います。
障がいのある子供の親御さんがパラリンピックを見て、上肢に障がいがあって、これだけやれるのだから、うちの子供にもパラテコンドーをやらせようというきっかけになってくれればと思います。子供たちにも、「パパ、ママ、これやってみたい」と言ってほしいなと思います。小さいうちから競技に馴染んでいけば、きっと世界を目指せます。
(令和2年10月 東京都オリンピック・パラリンピック準備局パラリンピック部調整課インタビュー)