パラスポーツ・パラアスリートの支え手の方々からのメッセージ ~車いすバスケットボール~


 車いすバスケットボール女子日本代表のメカニック
をされている結城智之(ゆうきともゆき)さん支え手としての役割、パラスポーツやパラアスリートの魅力などをお伺いしました。車いすバスケットボールを支える方、競技、選手を知って、みんなで応援しましょう。


★車いすバスケットボール 
結城智之(ゆうきともゆき)さん
(車いすバスケットボール女子日本代表メカニック)

(写真提供 株式会社松永製作所)

<プロフィール>
 造園土木施工管理2年。車いすメーカーにて15年勤務した後、2年前に株式会社松永製作所(車いすメーカー)に入社し現在に至る。
 主に製造を担当し、選手の競技用車いすの採寸や修理などを受け持ちながら、メカニックとして大会に帯同
 製造で携わった車いす競技は、バスケットボール、テニス、バドミントン、フェンシングなど。
 現在は車いすバスケットボール女子日本代表メカニックとして活動

車いすバスケットボール女子日本代表のメカニックに携わることになったきっかけを教えてください。

 元々、自転車、バイク、車など車両関係が好きだったので、車いすをそういった乗り物、スポーツ車として扱っていた会社に就職しました。車両としてのカッコよさ、メカとしての魅力に惹かれていたんです。最初は、日常用の車いすの修理や組立てをしていましたが、スポーツ部門が面白そうだったので「異動させてください」とお願いして、そこで車いすバスケットボール、車いすテニス、陸上競技などの車いすの組み立てなどに携わるようになりました。
 採寸や修理対応などで、選手との接触も多くなっていき、それからアフターサポートとして、車いすテニスの大会や、大分国際車いすマラソンという世界的にも有名な大会に同行していくようになりました。メカニックとしてはあまり人手がいなかったので、車いすテニス、車いすバスケットボール、車いすマラソンなど色々な競技に帯同しました。
 今の会社に入ってからは、前職の経験もあり、私が適任ではないかということで、車いすバスケットボール女子日本代表のメカニックをメインに活動をしています。大会に帯同しているときは、競技用車いすが壊れたり、アルミがぶつかって割れたりした場合などに修理を行っていますが、私の場合には、単なる修理のみならず、障がいの度合いや選手のこぎ方などに合わせた細かなフィッティングも行っています。
 選手それぞれの障がいや、プレイヤーポジション、動きなどに合わせて、その選手にしか乗れない車いすを仕立てる、そういったところを調整していくのは実に楽しいです。そうした、障がいなどに合わせたフィッティングをして、試して、どういう変化があったか選手からフィードバックしてもらって、それを自分の中で噛み砕いて、さらに提案して「味付け」をしています。選手の中には「結城の採寸でないとダメだ」と言ってくれる方もいます。
  













(写真提供 株式会社松永製作所)

車いすバスケットボールの魅力を教えてください。

 激しさ、迫力が魅力の一つです。車いす同士がぶつかった時の衝撃音はすごいです。また、車いすに乗ったままシュートを打つのがいかに難しいかを知ってほしいです。プロのBリーグの選手に車いすに乗ってもらって、シュートを打ってもらってもまず届きません。それを、車いすをこいで、ドリブルをして、3ポイントシュートを入れるなんていうのは、普通ではあり得ない凄いことです。そんな選手たちの「超人ぶり」をぜひ体感してもらえたらと思います。
 また、車いすバスケットボールにはクラス分け制度というのがあります。選手には障がいのレベルによって、それぞれ持ち点が決められており、試合中、コート上にいる5人の選手の持ち点の合計点が14点以下になるようにしなければなりません。選手のキャラクターや、障がいに応じたプレイヤーポジションもチームを構成する重要な要素で、これらを加味しながら14点以下になるようポジショニングを行って、自分なりのチームを作ってみるのも面白いです。選手を1人代えようと思っても、14点以下というのがあるので2人同時に代えなければならないケースもあって、その場合、持ち点と相性を踏まえた2人1組のコンビにして、出場させたりします。
 最近は、国内では健常者も車いすバスケットボールの大会に出られるので、それも魅力の一つです。

  
(写真提供 JWBF/X-1)

選手との思い出のエピソードをお聞かせください。

 車いすメーカーで通算20年近く勤務していますが、その現場で、選手たちが育っていく、成長していく過程を見るのが楽しかったですね。トップクラスの選手たちからは、障がいや体形に合わせたきめ細かなセッティング「味付け」をよく頼まれます。
 例えば、安直樹選手(現車いすフェンシング)は、元々車いすバスケットボールをやっていて、その時からサポートをしていましたが、競技変更してからも、引き続き車いすの製作に携わらせていただいており、何かの縁を感じます。安選手は、1年に2、3台車いすを作るのですが、彼の場合はこだわりが強くて、一番注文が多いのですが、その分鍛えられましたね(笑)。
 車いすバスケットボールでサポートしていた選手で言うと、現車いすバスケットボール女子日本代表のメカニックで携わっている選手が、国際的な大会の最後の最後で片手のフックシュートで3ポイントシュートを決めて、世界3位になった瞬間はとてもカッコ良かったです。他に、男子の選手で宮城MAX所属の藤本怜央選手が、「結城のセッティングが一番いい」と言ってくれたのは嬉しかったですね。
 メカニックとしては、試合中、車いすが壊れないように、トラブルがないように、事前に念入りにチェックし、試合に万全の状態で臨めるようにしています。試合中は、選手以上に声を出して応援しています。

(株式会社松永製作所サポート 小田島理恵選手)
(写真提供 株式会社松永製作所)

パラリンピック・パラスポーツへの思いをお聞かせください。

 みんなにパラリンピックを、スポーツとして、「超人ショー」として観てもらいたいと思います。障がいのある方が頑張っている姿を見て、彼らはすごいというところを分かってもらえれば、パラリンピックはもっと盛り上がると思います。障がいを乗り越えて戦う努力、勇気が伝わる大会になればいいと思います。特に日本の選手がメダルを取って、その満面の笑みを見れば、パラリンピックは一層認知されると思いますし、自分自身も頑張れる気がします。
 それから、心のバリアフリ―というのか、多くの方が障がいのある方をもっと身近に感じて、色々な場面で声掛けしたりできるようになることが大事です。また、身近なところでもっとパラスポーツができるようになればと思います。体育館などがもっと使えるようになると嬉しいです。あとは、パラスポーツの体験会を増やして、多くの子供たちに体験してもらえると、今後パラスポーツへの理解も進んでいくのではないかと思っています。

(令和2年10月 東京都オリンピック・パラリンピック準備局パラリンピック部調整課インタビュー)